[第4章]フォルクスワーゲン車のために選び抜かれたモノたち① エンジンオイルは人間の血液によく例えられます。ガソリンがなければ車は動きませんが、エンジンオイルもまた車にとって必要不可欠なものなのです。その役割としてはまず、油膜によってエンジン各部の摩擦を減らして、金属部分の摩耗を防ぐ“潤滑”機能があります。そして、エンジン内部をクリーンに保つ“清浄”、エンジンの熱を外部に放出する“冷却”、錆の原因になる水分や空気を遮断する“防錆”、シリンダー内部のガスを漏らさないようにする“密封”といった機能もまた大切な役割です。 これを実現するために、世の中にはさまざまなブランドのエンジンオイルが存在しますが、そのつくり方によって大きく三つのタイプがあるのをご存じでしょうか。ひとつめは、原油から精製される鉱物油(ミネラル)。ふたつめは化学的に合成してつくられる全合成油(シンセティック)。そして、鉱物油と全合成油を混ぜてつくった部分合成油(パート・シンセティック)の三つです。 では、その違いは何でしょうか? まず、一般に鉱物油は安く、全合成油は高いという傾向があります。鉱物油は生産にかかるコストが安く、大量に生産されるため、値段が安いのです。一方、性能の面では全合成油のほうが優れています。オイルの基本性能が高いうえに、その性能が長期・長距離にわたって維持されます。また、蒸発成分が少ないので、オイル消費が少ないというメリットもあります。部分合成油は、価格、性能とも両者の中間に位置しています。 さて、オイルは数字や記号によってその性能が示されます。実際、オイル缶を見ると、いろいろな数字や記号が並んでいるはずです。これによって、オイルの性質や性能が比較できるわけです。よく目にするものとしては“0W-40”や“5W-30”の粘度指数があります。これはSAE(米国自動車技術者協会)が定めたもので、温度によるオイルの粘り具合を表しています。Wの前の数字が低温時の、またハイフンのうしろの数字が高温時の粘度をそれぞれ表します。前者は数字が小さいほど低温時の始動性に優れることを示し、また、後者は、数字が大きいほど熱さに強く、過酷な条件でも潤滑性能が衰えにくいことを表しています。しかし、粘度が高いオイルはエンジンの回転抵抗を増やすため、燃費の面では不利といえます。 ではいったい、さまざまな種類のオイルの中から、どれを選べばよいのでしょうか?060エンジンオイルも 進化し続けています
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